松本市の松南病院に対しカルテの開示請求を行いました
松南病院に対し個人情報保護法第28条に基づくカルテ等の開示請求を行い、開示されました。
個人情報保護法第28条
「私の個人情報を持っている人はなんの情報を持っている人は何を持っているのかみせなきゃダメですよ」って条文です。
たとえば、Tポイントカードを発行しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(Tポイントカードの発行会社でツタヤの運営会社でもありますね)に対しこの条文をもとに請求すれば、あなたがいつ、どこでTポイントカードを使用して何を買ったかが文書で送られてきます。「X日にファミマの〇〇ビル店でカゴメ一日分の野菜を購入しています」みたいなのがずらーっと。 mainichi.jp 毎日新聞の記者がやってましたね。
これは総務省が2003年に作った法律です。ところでそれより前の1997年に、当時の厚生省が病院に「患者にカルテ開示しなさい!」って法律を作ろうとしたことがあります。これに日本医師会は強く反発しました。
医師側、強く反発 カルテ開示の義務法制化
カルテなどの診療記録の開示を医療機関の管理者の義務として法律に定めるべきかどうかをめぐって医療審議会(厚相の諮問機関)の議論が対立している。厚生省は当初、検討会が昨年六月に法制化することを提言した報告書の内容に沿い、今国会での法改正を目指したいとしていたが、委員構成で医師や病院関係者の多い審議会で“反撃”に遭っている。意見の一本化は難航しそうだ。
「日本医師会として指針を出した。法制化には反対だ」。二十七日に開かれた審議会で、委員のひとり宮坂雄平・日本医師会常任理事が口火を切った。
日本医師会は十二日に、カルテなどの診療記録を開示することは医師の倫理規範のひとつと定めた独自の指針を公表した。法制化には断固反対の姿勢を示すが、それ以外は厚生省の検討会報告書の内容とほぼ一致している。
「地域では、大部分が(法制化に)反対している。法制化は日本の風土になじまない」(加藤順吉郎・愛知県医師会会長)
これに対して、木村静子成蹊大名誉教授は「指針は医師会内規範でそれ以外の適用はない。外部からクレームをつけることもできない。すべての国民に関係する問題なので、医療側も患者側も認識するという意味で、規範的な法律が必要だ」と話した。
1999年01月28日 朝日新聞夕刊第二社会面
当時の審議会の会議録なんかは厚生労働省のwebサイトにあるので興味があればみて頂くとして、文中に「宮坂雄平・日本医師会常任理事」という文字が出てきましたね。この宮坂雄平氏、松南病院の院長・宮坂義男氏のお父さんです。松南病院の前理事長ですね。
結局厚生省による法制化は見送られました。しかし総務省が作った個人情報保護法では「個人情報を取り扱う事業者」、つまり他人の住所も名前も電話番号も取り扱っている病院や診療所も対象となったのです。
松南病院はカルテ開示の際「日本医師会のガイドラインに従え、未成年は親がやらないとだめだ」とか色々言ってきましたが、できました。看護記録も含め全部で70枚近くあるので一部のみ紹介します。
任意入院同意書。精神保健法は1995年に精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)になっています。精神保健福祉法に第22条の3はないです。直せや。
これは精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(告示)によるものです。
第五 任意入院者の開放処遇の制限について
一 基本的な考え方
(一) 任意入院者は、原則として、開放的な環境での処遇(本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇をいう。以下「開放処遇」という。)を受けるものとする。
(二) 任意入院者は開放処遇を受けることを、文書により、当該任意入院者に伝えるものとする。
(三) 任意入院者の開放処遇の制限は、当該任意入院者の症状からみて、その開放処遇を制限しなければその医療又は保護を図ることが著しく困難であると医師が判断する場合にのみ行われるものであって、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあってはならないものとする。
(四) 任意入院者の開放処遇の制限は、医師の判断によって始められるが、その後おおむね七十二時間以内に、精神保健指定医は、当該任意入院者の診察を行うものとする。また、精神保健指定医は、必要に応じて、積極的に診察を行うよう努めるものとする。
(五) なお、任意入院者本人の意思により開放処遇が制限される環境に入院させることもあり得るが、この場合には開放処遇の制限に当たらないものとする。この場合においては、本人の意思による開放処遇の制限である旨の書面を得なければならないものとする。
基本的な考え方の 「(五) なお~」のところで取り付けないといけない文章ですね。
法律やったことがない人以外ピンとこないかもしれないので「告示」について説明します。法律ってのは知ってますよね。守んなきゃいけないやつです。
この「必要な基準」を定めたのが告示です。なんで法律で決めないのかといえば、医療の専門家じゃない国会議員に細々としたルールを作らせるよりは、厚生労働省の医官(国家公務員で政策やってる医師)だとか有識者が決めたほうがちゃんとしたものを作れるだろう、ってものです。国会審議時間かかるし。これを委任立法っていいます。
なんで2分の診察が35分に化けてるんでしょう。
黒塗りで消したのは作業療法士の名字です。前看護師の名字のシャチハタが押してある松南病院の看護記録の画像をTwitterに上げたら松南病院から実家に電話かかってきたので。エゴサしてる暇があったら他のことやったらどうなの。
これ、入院時にやらされた「心理検査」。地図記号にことわざの意味を答えるのが心理検査らしい。「えびで鯛を釣る」の意味を小さな投資で大きなリターンを得るって書いた16歳変な奴だな。
ところで、何回も退院を請求していましたが、診療録(カルテ)に退院云々の話があるのはここだけです。
任意入院の患者が退院請求したとしても、「なかったこと」にすればいいのだから。
そのへんをのらりくらりやっているのがこの病院なのです。
最後に。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準 基本理念
入院患者の処遇は、患者の個人としての尊厳を尊重し、その人権に配慮しつつ、適切な精神医療の確保及び社会復帰の促進に資するものでなければならないものとする。また、処遇に当たつて、患者の自由の制限が必要とされる場合においても、その旨を患者にできる限り説明して制限を行うよう努めるとともに、その制限は患者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないものとする。