和心会松南病院被害者の会

松本市笹部にある松南病院について

松南病院の問題点

松南病院は精神保健福祉法を無視した違法医療施設である 医療法人和心会(宮坂義男理事長)が運営する長野県松本市笹部3の松南病院は、精神保健福祉法に定められた規定を遵守せず、違法な退院制限を行い患者を“閉じ込めて”いる。

大半の患者の主治医である院長の宮坂義男医師は任意入院の患者の退院請求を“聞き流し”退院させないでいる。任意入院の患者から退院の申し出があった場合、精神保健福祉法にもとづき病院は退院させるか72時間に限って入院を延長するか(そしてその間に医療保護入院に切り替えるか)の二つしか選択肢はないが、宮坂医師はそれを無視して、任意入院のまま72時間以上にわたって退院を制限している。

【用語解説】精神保健福祉法
正式名称は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」。精神障害者の人権について定めた法律。


【用語解説】任意入院 本人が自ら入院を希望して入院する精神科の入院形態。退院を申し出ることで、自由に退院することができる。


【用語解説】医療保護入院
保護者と精神科指定医による強制入院。保護者の申し出か主治医の許可がなければ退院することができない(=本人の希望で退院できない)。


【用語解説】退院制限
任意入院中の患者が退院を申し出た場合において、精神科指定医の診察によって、入院の継続の必要性を認めた場合に、患者を72時間を限って退院させないことができる制度。必要であればその間に医療保護入院に切り替えることができる。

県内ではめずらしい児童思春期病棟? 退院できない子どもたち

松南病院には長野県ではめずらしい児童思春期の子どもを専門にした精神科病棟がある。松南病院では2階Bエリアに位置し、病棟と外の世界をつなぐエレベーターは常時施錠されている。許可がなければ外出すらできない閉鎖病棟だ。

この病棟には20歳未満の多くの子どもが入院している。その多くが中学生や高校生、または高校生に相当する歳の人たちだ。そしてそのうちの一部は6カ月以上の長期入院、それも任意入院を余儀なくされている。

患者の多くの病名は「統合失調症」とされるが、親にそれが知らされることがあっても本人に知らされることはない。

彼らは何らかのきっかけでこの病院に任意入院し、高校生の年代になると病院から通信制の学校に通学している。もはや居住施設と化しているのだ。

彼らが宮坂医師の治療方針に納得し、自ら治療を受けているとは考え難い。多くの児童思春期病棟の患者は今すぐにでも退院したいと思っているが、退院できない。なぜならこの病院は任意入院のまま72時間以上にわたって退院を制限しているからだ。

医療保護入院なら定期的に県に病状報告書を提出しなければならず不正があればチェックされるが、任意入院にはそれがない。任意入院はあくまで患者自らが望んで入院しているとされているからだ。でも松南病院の実際は違う。行政にも把握されない半強制入院だ。

松南病院の入院に疑問を呈した16歳の一例

松南病院の入院に疑問を思った元入院患者18歳(入院当時16歳)男性の例を取ろう。

彼は小学3年生から強迫観念があり心配症だった。小学6年生時、抜毛を認めていた。中学1年の7月から不登校となり、中学2年制から抑うつ感を認めていた。高校には進学せず、高卒認定試験を受験した。2013年12月からリストカットをするようになり、2014年2月26日カフェインを大量内服し自殺未遂を図った。諏訪地域の総合病院集中治療室に入院、3月1日松南病院児童思春期病棟へ任意入院で転院した。

松南病院ではジプレキサ20mgが処方されたが、体重増加と過鎮静によりロナセン16mgに処方が変更された。4月、5月、6月と再三退院の申し入れを主治医である宮坂医師に行ったが聞き流されたり「あまり退院したいしたいと騒ぐようなら医療保護に切り替えるよ?」などと言われるが、退院制限の72時間に突入することも、退院できることもなかった。さして調子が悪いわけでもないのに「いま調子悪いよね」と看護師がやってきて、薬剤名も告げられず筋肉注射を打たれたこともある。

7月に単独外出のまま帰宅し退院扱いとなった。このあいだに病院が彼に退院のめどを示すことはなかった。心理検査などが行われることもなく抗精神病薬が投与されていた。

その後病院を県立精神科病院に転院しADHDと診断され、処方もADHDの薬ストラテラに絞られる。統合失調症の治療に用いられる抗精神病薬は今の状態なら不要だと県立病院の医師は言った。明らかな統合失調症の経過は、松南病院の紹介状からは教示されなかったという。彼はその後、都内の大学に進学した。

診察は週一3分ナースステーションで ずさんな病院の体制

松南病院の入院中の診察は週に一回ナースステーションで3分間だけ行われる。回診はない。吐き気がすると看護師に訴えても「心理的なもの」だと言われるだけで医師の診察を受けることも薬が処方されることもなにもなかった。病室は6人部屋で、パーティションはなくプライバシーはない。男女共同の病棟であるが病室のドアを閉めることは禁じられた。ある看護師は自由であるはずの公衆電話からの電話について、患者が「殺す」と発言したことに目くじらを立て使用中止にすると言った。厚生労働省の基準では「電話及び面会に関しては患者の医療又は保護に欠くことのできない限度での制限が行われる場合があるが、これは、病状の悪化を招き、あるいは治療効果を妨げる等、医療又は保護の上で合理的な理由がある場合であつて、かつ、合理的な方法及び範囲における制限に限られるものであり、個々の患者の医療又は保護の上での必要性を慎重に判断して決定すべきものである」としている。

1階開放病棟火災警報器の非常ボタンはテープが貼られ、押せないようになっている。これは認知症の患者が誤って非常時でないのに押してしまうからだと言うが、本当の非常時にどうするのか。

松南病院の病床数は精神科200床・療養40床の240床。常勤医師は8人。

我々が行政に求めるのは松南病院で行われていることの解明

松南病院の退院制限は明確な法令違反、そして精神疾患を少しでも良くしたいと自ら望んで、治療を受けに入院してきた患者への人権を踏みにじる行為に他ならない。

我々は行政に松南病院への立ち入り監査や、行政処分を求めたい。松南病院では今も、退院を不当に制限されている人がいるのだ。